看護物語

~アイスが食べたい~

2018.08.10

急性期病棟の6階では、治療目的で入院後、容体が変化し看取りとなることも多くあります。そのため、急性期からターミナル期までの看護を必要とし、患者・家族の思いや希望を尊重できるように日々取り組んでいます。

 今回、心不全による下肢浮腫、胆道ステント留置中であるが黄疸がみられ、閉鎖の疑いから内視鏡下ステント交換目的にて入院となった80代の女性A氏との関わりを紹介します。A氏は肝硬変・DIC、心不全があり浮腫も強く、呼吸状態の低下も著明だったことから呼吸器の適応でしたが、本人の希望により使用しないことを決定した方です。また、身寄りはなく施設で生活されており、入所中はお粥・刻み食を食べていました。性格としては、好き嫌いがはっきりとしており、意思表示をはっきりとする方でした。呼吸器を使用しない事を決定した際に「私は最後までしゃべっていたい、痛いのはいや、口から水が飲みたい、アイスやオレンジジュースも」との発言がありました。入院後12/23からペースト食、ゼリー食を再開後12/25より再度絶食となっていましたが、主治医に許可をもらい、栄養士に相談し12/28より昼のみ楽しみ溶けないアイスを食べ始めました。その後、心不全の悪化で呼吸状態も低下し、酸素を10L使用している状態となりました。12/29には「苦しい…」「のどが渇く…」などの苦しさの訴えも増え、活気の低下がみられていました。12/30に本人より「アイスを食べるのもこれが最後かもしれない、ガリガリ君食べたい」との訴えがあり、本人が好きなミカン味のガリガリ君を食べました。その際は呼吸状態の悪化がみられていたにも関わらず、ムセ込むことなく全量摂取し、笑顔をみせ「おいしかったよ」との言葉がみられました。A氏はその翌日に呼吸停止となり自然看取りを図り永眠されました。

今回の事例を通して、自分の意志で看取りを選択し、最後まで自分で食事をしたいという希望を叶えることができました。その結果、呼吸苦や口渇感がある中で、A氏の希望するアイスを食べたことにより快表情の表出へとつながりました。この反応から、A氏の食べたいと言う欲求を少しでも満たすことができたと考えます。

マズローの欲求5段階説によれば、人間の基本的欲求は食欲、睡眠欲などの生理的欲求が最も重要とされていますが、入院することで満たされなくなる欲求でもあります。看取りが近く、衰弱していても、「食べたい」という基本的欲求を満たすことでQOL向上につながったといえます。今回の事例を通して疾患の治療という観点だけでなく、残された時間をその人らしく過ごすために看護師としてできることを改めて学ぶことができました。

今回協力をいただいた、A氏、家族、主治医、スタッフに深く感謝いたします。

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